【誕生日】

「お誕生日、おめでとうございますv景時さん」

今日は3月5日。景時の誕生日である。
望美は景時の側にいるようになって初めての誕生日という事で 景時を仕事に送り出し朝からはりきって部屋を飾った。
もちろん数日前からこっそりと準備を進めつつではあるが。
そして、帰ってきてあんぐりと口を開けている景時に先ほどの言葉を贈ったのだ。
「の、望美ちゃん?これって・・・・」

帰ってきて早々望美の満面の笑顔と部屋の飾り、それと机に並んでいる沢山の料理に迎えられた景時は未だ状況が飲み込めてないらしく何度か瞬きしている。

「景時さん、今日誕生日でしょ?だからお祝いです」

にっこりと微笑みつつ机の上に並べている料理を指さす。
「あ、あと最後にケーキも作ってあるんですよv朔と一緒に作ったものなんですけどね。

あ、ケーキって私たちの世界でのお菓子です」

そうやって嬉しそうに説明していく望美を見て景時は状況を把握していく。

そして・・・・

「望美ちゃんが俺のために?感激だなぁ〜!!」

そう言うと望美の華奢な体をすっぽりと包み込むようにして抱き寄せる。

「か、景時さん!?」

がっつりと抱き込まれて少々苦しい望美は手をパタパタと泳がせる。
「あ、ごめんごめん!!苦しかったよね。でもあまりに嬉しくてさぁ〜」

そんな景時は、あやまりながらも望美から手を離さない。
ただゆっくりと体を離し距離を取っただけ。
顔には満面の笑みを浮かべていつも以上にさわやかムード到来だ。

「それにしても、今日の朝までなんにもしてなかったのに、凄いね望美ちゃんv」

景時は抱き合ったまま部屋の中を見回す。

「だって、私たちが一緒に暮らすようになって初めての景時さんの誕生日ですよ?気合い入れてみました」

「うんうんvvやっぱりそういうところが望美ちゃんらしくて好きだよ〜」

そういうと再度望美の背中に回していた腕に力を込める。

「それで・・・誕生日の贈り物、何かしたいんですけど・・・何がいいですか?」

「贈り物?いやいや〜これだけで十分だよv」

もう満足、とばかりに首を振る景時。
しかし、ここは彼女である自分の意地。

「いいえ、いつも景時さんお仕事してくださってるんですから、誕生日くらい何か贈りたいです」

そんな望美に景時は少し照れくさそうに顔を赤らめる。

「え〜でも別にほしい物無いよ?もう十分ほしい物は手に入ってるしさ〜」

そう言うと景時は目の前にある望美の額に軽く口づける。

「でも・・・何か贈りたいです。いつも私ばかり何か貰ってるから」

額とはいえキスされ顔を赤らめつつもめげずに聞き出そうとする望美。
ここで流されてはいつもと同じように貰ってばっかりだ。
そう言うと、景時は少し困ったように顔をゆがめる。

「いや〜ほしい物、一つあるにはあるんだよ?でもね〜」

そう言うと景時は言葉を濁す。
しかしそれを聞くと望美は、ぱぁと顔を輝かせた。

「あるんですか?言ってみてください!!」

「いや、で、でもそれを頂戴って言うのとは何か違うというかさ〜」

更に言葉を濁す景時。笑い方もだんだん苦笑いになってくる。
本当に隠し事の苦手な人だ。

「何ですか?私に出来る事ならなんでもしますよ?」

「うん。ってか望美ちゃんにしか無理なんだけどね・・・」

望美の期待に満ちた顔を見て景時は大きく息を吸い込む。

「じゃ、じゃあ言うけど・・・・笑わない?」

笑う?笑うようなほしい物?
望美は疑問に思いつつ、はい。と返事をする。

「じゃあ、言うね・・・あの・・・俺・・・・赤ちゃん・・・が欲しいんだよ・・・」

顔を真っ赤にする景時。
どんどん小さくなっていく声。
なんと言ったのか。
確か、赤ちゃん・・・・

「あ、赤ちゃんですね!!なるほど〜って・・・え!?あ・・赤ちゃん!?ですか!!!?」

笑顔で頷いていた望美は言葉の意味を理解すると声を裏返して叫んだ。

「う・・・うん・・・・やっぱり・・・駄目・・・だよね・・・あはははは」

驚きでいっぱいの望美の顔を見て焦って作り笑いの景時。
真っ赤になって焦っている顔を見せまいと望美から手を離し後ろを向く。

「あ、の・・・望美ちゃん。こ、これすっごく美味しそうだよぉ!!」

あまりの気まずさに思わず話題変え。
そんな景時がとても可愛く思えて望美は驚きを笑顔に変える。

「いいですよ」

さらりとそう言って景時の背中に抱きつく。
景時のどきどきという鼓動を聞きながら、微笑む。

「え!?い・・・いいって・・・あの・・・望美ちゃん!?」

景時は思ってもいなかった返事に驚きの言葉を返す。

「赤ちゃん、景時さんが欲しいなら・・・その・・・」

言ってて恥ずかしくなった望美は景時の背中を強く抱きしめたまま声を絞り出す。
そんな望美の気持ちが嬉しくて景時は望美の腕に自分の腕を重ねて・・・

「ありがとう、望美ちゃん。本当に大好きだよ。世界で誰より幸せな家族を作ろう」

そう言うとお互い真っ赤な顔を見合わせてにっこりと微笑む。
これからもずっとお互いに祝う日を迎えるために・・・・
一緒に居るために・・・・
強く抱きしめ合おう。


                了

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